JAPANITIES日本とフランスを、ことばと食でつなぐ。
NIHONSHU · 日本酒

日本酒を、もっと深く。

造り方・種類・酒米・産地・温度・料理との相性まで、順番に読み進められます。

QUICK GUIDE

日本酒の、いちばんざっくりした地図。

原料米・米麹・水

基本の原料は白米、米麹、水。醸造アルコールを加えるタイプもあります。ぶどうの果汁で造るワインと違い、米のでんぷんを糖に変える工程が必要です。

精米歩合数字が小さいほど、よく磨いた米

精米歩合60%は、玄米の60%が残ったということ。磨くほど雑味のもとになる外側が減りますが、好みを決めるのは数字だけではありません。

純米かどうか醸造アルコールを加えない=純米

「純米」は醸造アルコールを加えないお酒。「吟醸」は造り方と精米歩合の軸で、別の見方です。だから「純米吟醸」という組み合わせがあります。

飲む温度冷やしても、温めても

日本酒造組合中央会は、冷酒8〜15℃、常温15〜25℃、燗40〜50℃を目安として紹介しています。同じ1本でも温度で印象が変わります。

あくまで目安です。蔵・銘柄・年によって味わいは変わります。

02 / PROCESS

米が日本酒になるまで、8つのステップ。

日本酒は、米・麹・水から、糖化とアルコール発酵を同じタンクで同時に進めて造ります。これを「並行複発酵」と呼びます。ワインは果汁の糖をそのまま発酵させるので、ここが大きな違いです。

  1. 1

    精米

    玄米の外側を削り、中心部を残します。吟醸酒ではとくに丁寧に磨きます。

  2. 2

    洗米・浸漬

    米を洗い、水を吸わせます。吸水の具合は仕上がりに響くため、蔵では時間を細かく管理します。

  3. 3

    蒸し

    炊くのではなく蒸します。蒸した米は、麹造りと仕込みの両方に使われます。

  4. 4

    製麹

    蒸した米に麹菌を振り、2日ほど育てます。麹の酵素がでんぷんを糖に変えます。

  5. 5

    酒母

    酵母を元気に増やす「酒母」を造ります。乳酸を自然に育てる生酛・山廃と、乳酸を加える速醸があります。

  6. 6

    三段仕込み

    蒸米・麹・水を、「添・仲・留」の3回に分けて4日かけて加えます。急に増やさず、酵母が働きやすい環境を保つ知恵です。

  7. 7

    発酵(もろみ)

    タンクの中の「もろみ」で、糖化と発酵が並行して進みます。低めの温度でじっくり進めるお酒もあります。

  8. 8

    搾り・火入れ・貯蔵

    もろみを搾って酒と酒粕に分け、ろ過・火入れ・貯蔵・加水などを経て瓶詰めします。生酒は火入れをしないタイプです。

各工程の日数や方法は蔵・酒質によって違います。ここでは一般的な流れを示します。

MANIACマニアックな話
精米には時間がかかる

米を割らないよう低速でゆっくり磨くため、高精白の米は精米に数十時間以上かかることもあります。

酒母の2つの流れ

乳酸菌の働きを自然に利用する生酛(山卸をなくした山廃酛を含む)と、乳酸を加えて短期間で造る速醸酛があります。速醸酛は1909年ごろに考案され、現在の主流です。

添・踊り・仲・留

1日目に「添」、2日目は休ませる「踊り」、3日目に「仲」、4日目に「留」。踊りの間に、酵母がしっかり増えます。

約20%まで届く発酵

もろみは、糖化と発酵が同時に進むことで約20%前後の度数に届きます。醸造酒としては高い数字で、通常は加水して15度前後に整えます。

03 / KOJI

麹は、日本酒の縁の下の力持ち。

麹は、蒸した米に「麹菌」を育てたもの。日本酒だけでなく、味噌・醤油・みりんなど、日本の発酵食品を支える存在です。酵母がアルコールを造る前に、麹が米のでんぷんを糖に変えます。

麹菌

Aspergillus oryzae

酒造りに使うのは黄麹菌(学名 Aspergillus oryzae)。日本醸造学会は2006年にこの菌を「国菌」に認定しました。

酵素のはたらき

糖とうま味をつくる

麹の酵素は、でんぷんを糖に、たんぱく質をアミノ酸に分解します。糖は酵母のえさになり、アミノ酸は旨みのもとになります。

麹室と製麹

約2日の手仕事

蒸した米を、温かく湿った麹室に広げ、麹菌を育てます。温度と湿り気を見ながら、米を混ぜて整える作業が続きます。

破精(はぜ)

菌が米の中へ

麹菌が米の表面だけでなく、中心へ食い込むように育った状態を「突き破精」と呼びます。酒造りでは、この状態の麹が好まれるといわれます。

麹は、食卓にもいる。

  • 味噌・醤油・みりん:麹の力で、旨みと甘みを引き出します。
  • 甘酒:米麹が米のでんぷんを糖に変え、やさしい甘さになります。
  • 塩麹:塩と米麹を合わせた調味料で、肉や魚をやわらかくします。
塩麹の唐揚げのレシピを見る →

2024年には、麹を使う「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されました。日本酒では、麹にする米(麹米)の使用割合が15%以上などの基準もあります。

MANIACマニアックな話
一麹、二酛、三造り

酒造りで大切な順を示す言葉とされ、一番に麹、次に酒母、そして仕込みを挙げます。

麹米と掛米

麹にする米(麹米)と、蒸してそのまま仕込む米(掛米)を分けて使います。麹米だけ別の酒米にするなど、使い分ける蔵もあります。

種麹(もやし)

麹菌の胞子は、専門の「種麹屋(もやし屋)」から求める蔵が多く、蔵ごとに好みの菌を選びます。

04 / GRADES

ラベルの「純米」「吟醸」を読み解く。

「特定名称酒」は、原料・精米歩合・造り方などの条件を満たした8種類のお酒です。大きく「純米」系(醸造アルコールなし)と、醸造アルコールを加える系統に分かれます。

名称精米歩合原料イメージ
純米大吟醸酒50%以下米・麹・水華やかな香り、繊細
大吟醸酒50%以下米・麹・醸造アルコール香り高く軽やか
純米吟醸酒60%以下米・麹・水果実のような香りと旨み
吟醸酒60%以下米・麹・醸造アルコールすっきり、香りが立つ
特別純米酒60%以下、または特別な製法米・麹・水個性のある純米
特別本醸造酒60%以下、または特別な製法米・麹・醸造アルコール軽快で飲みやすい
本醸造酒70%以下米・麹・醸造アルコールすっきり、食事に合わせやすい
純米酒数値の条件なし米・麹・水米の旨みとコク

醸造アルコールの量は白米重量の10%以下、麹米の使用割合は15%以上など、ほかの条件もあります。「イメージ」は一般的な傾向で、実際の味は蔵や銘柄で異なります。

Source : JSS ↗

日本酒を詳しく知る →
MANIACマニアックな話
醸造アルコールの役割

醸造アルコールは搾る前に加えられ、香りを引き出したり、すっきりした味わいにしたりするために使われます。「質が低い」という見方は誤解で、それぞれの個性として楽しめます。

三増酒の時代

戦中・戦後の米不足のころ、アルコールや糖類・酸味料で量を増やした「三倍増醸酒」が広まりました。現在の特定名称酒とは別の歴史です。

日本酒度と酸度

日本酒度は水を0とした比重の目安で、糖分が多いとマイナス、少ないとプラスに傾きます。酸度が高いと辛く感じやすいなど、数字だけでは甘辛は決まりません。

吟醸造り

吟醸酒は、低めの温度で長くゆっくり発酵させることが多く、それが果実のような吟醸香を生みます。

05 / SAKE RICE

酒米は、ごはんの米とは別もの。

酒造りに向く米は「酒造好適米(酒米)」と呼ばれ、粒が大きく、中心に「心白」という白い部分がある品種が多いのが特徴です。品種名は、ラベルや蔵の紹介に書かれることがあります。

兵庫県

山田錦

Yamada Nishiki

1936年に兵庫県で誕生した、「酒米の王様」とも呼ばれる品種。心白が小さく、高く磨いても割れにくいため、吟醸酒に使われます。

新潟県

五百万石

Gohyakumangoku

1957年に新潟県で開発。酒米の中で作付面積が最も大きい品種として知られ、すっきりした酒質に仕上がりやすいとされます。

岡山県

雄町

Omachi

栽培がむずかしく、生産は岡山県にほぼ集中する希少な品種。ふくよかで丸みのある旨みと紹介されます。

長野県

美山錦

Miyama Nishiki

長野県で開発された品種。シャープで軽快な味わいに仕上がりやすいといわれます。

山形県など

出羽燦々 ほか

Dewasansan & others

各地で地元の酒米が育てられています。山形の出羽燦々、兵庫の愛山、秋田の秋田酒こまちなど、土地の名前を持つ米も多くあります。

品種の味わいは「傾向」です。同じ米でも、蔵の造り方と精米歩合で印象は大きく変わります。

MANIACマニアックな話
山田錦の親

山田錦は、「山田穂」と「短稈渡船」の交配から生まれた品種です。

雄町の古さ

1859年ごろに岡山で見いだされたとされる、現在も栽培されている酒米の中で古い品種の一つです。

五百万石の名前

新潟県の米の収穫量が500万石を超えたことを記念して名づけられたとされます。

良い酒米の目安

大粒で心白があり、たんぱく質が少なく、麹菌が入り込みやすい。これが酒米の目安とされます。

06 / REGIONS

どこで造る? 土地と水を手がかりに。

日本酒は全国で造られていて、同じ県でも蔵ごとに個性があります。まずは名前を聞く機会の多い産地を、気候・水・米の特徴とともに見てみましょう。

日本の酒どころ地図。色のついた県か、ピンを押すと説明が開きます。 · 県境:国土交通省「国土数値情報(行政区域データ)」をもとにJAPANITIESが簡略化

1

灘(兵庫県)

日本有数の酒どころ。「宮水」と呼ばれる地下水と、山田錦の産地に近いことで知られます。「灘五郷」は地理的表示(GI)にも指定されています。

2

伏見(京都府)

京都南部の酒造地。やわらかな口当たりの酒が多いといわれ、古くから湧き水に恵まれてきました。

3

新潟県

雪どけ水と五百万石の産地。「淡麗辛口」という言葉で語られる、すっきりした酒質が代表的です。蔵の数も全国屈指です。

4

広島県(西条)

明治時代に、軟水でも良い酒を造る方法が広まった土地。西条には酒蔵が集まり、やわらかく旨みのある酒が知られます。

5

秋田県

寒冷な気候と豊かな米どころ。1930年に秋田の蔵から分離された「きょうかい6号酵母」は、全国で使われる代表的な酵母です。

6

山形県

吟醸酒づくりが盛んな県。県全体が地理的表示「山形」に指定され、出羽燦々などの県産酒米も育てられています。

7

福島県

全国新酒鑑評会で金賞を多く受けている県として知られ、会津・中通り・浜通りで、地域ごとの個性があります。

8

高知県

「辛口」の酒が好まれる土地柄といわれ、地元の料理と一緒に酒を楽しむ文化が根づいています。

傾向を示す紹介です。各県の蔵では、ここに書いた特徴とは異なる個性の酒も造られています。

MANIACマニアックな話
宮水(灘)

灘では、西宮で見つかった井戸水「宮水」が江戸時代後期から使われたと伝わります。ミネラルが多い硬水で、発酵が力強く進み、しっかりした辛口になりやすいといわれます。

軟水醸造法(広島)

広島では明治時代に三浦仙三郎が、軟水でも良い酒を造る方法を確立したと伝わります。

杜氏集団

南部杜氏(岩手)、越後杜氏(新潟)、丹波杜氏(兵庫)、能登杜氏(石川)など、地域ごとの杜氏集団があり、蔵を支えてきました。

全国新酒鑑評会

1911年に始まった新酒の鑑評会で、毎年春に審査されます。金賞の数は、蔵や県の腕前を測る指標としてよく話題になります。

07 / BRANDS

名前をよく聞く、日本酒の銘柄を訪ねる。

日本各地の、よく名前を聞く9つの酒蔵・銘柄を紹介します。順位やおすすめではなく、蔵と土地を知る入口です。

獺祭 · 写真のラベルには、純米大吟醸・精米歩合39%と読み取れます。
写真: t-mizo · CC BY 2.0 · Wikimedia Commons ↗ (縮小して掲載)
DASSAI

獺祭

株式会社獺祭山口県岩国市1948年創業

公式サイトでは、純米大吟醸のシリーズ(例:磨き二割三分)を紹介しています。

写真のラベルには、純米大吟醸・精米歩合39%と読み取れます。

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久保田 · 写真は、「萬寿」の純米大吟醸のボトルです。
写真: Kozakura154 · CC BY 4.0 · Wikimedia Commons ↗ (縮小して掲載)
KUBOTA

久保田

朝日酒造新潟県長岡市1830年創業

「久保田」は1985年に誕生した銘柄で、公式サイトはキレのある味わいを特徴として紹介しています。

写真は、「萬寿」の純米大吟醸のボトルです。

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八海山 · 写真は、八海醸造の館内にある展示です。
写真: Rebirth10 · CC BY-SA 4.0 · Wikimedia Commons ↗ (縮小して掲載)
HAKKAISAN

八海山

八海醸造新潟県南魚沼市1922年創業

公式サイトは、「きれいな酒」を目指し、「よい酒を、多くの人に」を掲げると紹介しています。

写真は、八海醸造の館内にある展示です。

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月桂冠 · 写真は、伏見の月桂冠大倉記念館にある、白壁の酒蔵の建物です。
写真: 663highland · CC BY 2.5 · Wikimedia Commons ↗ (縮小して掲載)
GEKKEIKAN

月桂冠

月桂冠株式会社京都市伏見区1637年(寛永14年)創業

京都・伏見の酒蔵です。公式サイトは、1637年(寛永14年)の創業と紹介しています。

写真は、伏見の月桂冠大倉記念館にある、白壁の酒蔵の建物です。

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白鶴 · 写真は、白鶴酒造資料館にある、昔の酒造りの道具と人形の展示です。
写真: hslo · CC BY-SA 2.0 · Wikimedia Commons ↗ (縮小して掲載)
HAKUTSURU

白鶴

白鶴酒造神戸市東灘区(灘)1743年創業とされる

灘(神戸)の酒蔵です。創業は1743年(寛保3年)とされています。

写真は、白鶴酒造資料館にある、昔の酒造りの道具と人形の展示です。

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菊正宗 · 写真は、名古屋市の店先に置かれた菊正宗の酒樽です。
写真: 円周率3パーセント · CC BY-SA 4.0 · Wikimedia Commons ↗ (縮小して掲載)
KIKUMASAMUNE

菊正宗

菊正宗酒造神戸・御影(灘)創業から約360年(公式表記)

公式サイトは「灘から世界へ」を掲げ、生酛(きもと)造りを大きく紹介しています。

写真は、名古屋市の店先に置かれた菊正宗の酒樽です。

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大関 · 写真は、180mlの「ワンカップ大関」。ふたを開けてそのまま飲める、手軽なカップ入りの日本酒です。
写真: Kentin · CC BY-SA 4.0 · Wikimedia Commons ↗ (縮小して掲載)
OZEKI

大関

大関株式会社兵庫県西宮市1711年創醸

公式サイトでは、1711年の創醸以来の酒蔵として紹介しています。「ワンカップ大関」も、その商品のひとつです。

写真は、180mlの「ワンカップ大関」。ふたを開けてそのまま飲める、手軽なカップ入りの日本酒です。

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真澄 · 写真は、真澄の菰樽(こもだる)。樽には「天下之銘酒」の札が見えます。
写真: At1973 · CC BY-SA 4.0 · Wikimedia Commons ↗ (縮小して掲載)
MASUMI

真澄

宮坂醸造長野県諏訪市1662年(寛文2年)創業

公式サイトは、優良清酒酵母「協会七号」の発祥の蔵と紹介しています。

写真は、真澄の菰樽(こもだる)。樽には「天下之銘酒」の札が見えます。

公式サイト ↗
黒龍 · 写真は、永平寺町にある黒龍酒造の、店舗兼主屋の建物です。
写真: Suikotei · CC BY 4.0 · Wikimedia Commons ↗ (縮小して掲載)
KOKURYU

黒龍

黒龍酒造福井県永平寺町

公式サイトでは、「黒龍」と「九頭龍」の2つの銘柄を紹介しています。

写真は、永平寺町にある黒龍酒造の、店舗兼主屋の建物です。

公式サイト ↗

内容は、各蔵の公式サイトなどで確認できた情報に限っています。写真は Wikimedia Commons の自由ライセンスの写真で、撮影者とライセンスを表示しています。お酒は適量を。日本では20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。

08 / FLAVOUR TYPES

香りと味わいで、4つのタイプに分ける。

日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)は、日本酒を香りとコクの強弱で4タイプに整理しています。好みを探すときの地図になります。

薫酒

香り高いタイプ

吟醸酒、大吟醸酒など。果実や花のような華やかな香り。冷やして、ワイングラスで。

爽酒

軽快でなめらか

本醸造酒、生酒など。香りは穏やかで軽やか。冷やして気軽に。

醇酒

コクと旨みが豊か

純米酒など。米の旨みとふくらみ。常温から燗まで幅広く。

熟酒

熟成した深い味わい

古酒など。色は琥珀色に、香りは蜂蜜やスパイスのように。

MANIACマニアックな話
吟醸香の正体

代表的な成分は、リンゴのような「カプロン酸エチル」と、バナナのような「酢酸イソアミル」。酵母の種類で出方が変わります。

きょうかい酵母

日本醸造協会が頒布する酵母で、6号(1930年、秋田の蔵で分離)、7号(長野)、9号(熊本、吟醸向き)などが知られます。

09 / TEMPERATURE

同じお酒でも、温度で表情が変わる。

日本酒は、冷たくても温めても飲めるお酒です。昔から温度ごとに美しい名前が付けられています。まず自分の好きな温度を探してみましょう。

呼び名温度の目安印象
雪冷え約5℃しっかり冷たく、きりっと
花冷え約10℃香りが開き始める
涼冷え約15℃香りと味のバランス
常温(冷や)約20℃米の旨みが分かりやすい
人肌燗約35℃ほんのりぬくもり
ぬる燗約40℃ふくらみが増す
上燗約45℃旨みとキレ
熱燗約50℃香りが立ち、すっきり

温度名は一般的な目安です(日本酒造組合中央会は、冷酒8〜15℃・常温15〜25℃・燗40〜50℃と紹介)。銘柄ごとに合う温度は違うので、まずは瓶や蔵元の案内を参考に。

Source : JSS ↗

MANIACマニアックな話
燗冷まし

一度温めてから冷ました「燗冷まし」は、角が取れてまろやかになるといわれます。

和らぎ水

日本酒の合間に飲む水を「和らぎ水」と呼びます。飲み過ぎを防ぎ、味を整えるのに役立ちます。

10 / TABLEWARE

お酒をおいしくする、器の選び方。

日本酒は、器によって香りの立ち方も、口当たりも、温度の保ちやすさも変わります。代表的な酒器を、使い方と一緒に見てみましょう。

徳利

注ぐための器

首が細いとっくりは、お酒を入れて注ぐ器。燗をつけるときは、徳利ごと湯せんにすることが多く、そのまま食卓に出せます。

お猪口

小さな杯

一口ずつ味わう小ぶりの杯。容量は数十mlほどのものが多く、少しずつ注ぎ合うのにも向きます。

ぐい呑み

大ぶりの杯

お猪口より大きく、ぐいっと飲める杯。形や土の風合いに個性が出やすく、好みで集める人も多い器です。

盃(さかずき)

浅く平たい杯

浅く口の広い杯。お祝いの席や儀式でも使われます。

片口

注ぎ口のある鉢

注ぎ口の付いた鉢。瓶から移して、冷たいお酒を器ごと食卓に出すときに使います。

升

木の四角い器

もとは米や酒を量る木の道具で、一合は約180ml。木の香りがお酒に移ります。グラスを升に載せ、あふれるまで注ぐ「もっきり」という出し方もあります。

ワイングラス

香りを楽しむ

吟醸系の華やかな香りを楽しむには、ワイングラスも向いています。ボルドーのグラスがそのまま使えます。

素材で変わる、手ざわりと温度

素材特徴向く飲み方
陶器(土もの)土が原料。厚みがあり、手にやさしく、ぬくもりが伝わりにくい燗酒、旨みのある純米酒
磁器(石もの)石の粉が原料。薄くて硬く、水を吸わず、口当たりがなめらか冷酒、吟醸酒
ガラス透明で、色や冷たさを目でも楽しめる冷酒、香りの高い吟醸系
錫(すず)熱を伝えやすく、冷たさも温かさも手に届く冷酒、燗酒
木(升)木の香りが移る樽酒、お祝いの席

酒器の多くは焼き物。産地をのぞいてみる

日本には各地に焼き物の産地があり、それぞれの土と技で酒器が作られています。ほんの一部を紹介します。

岡山県

備前焼

釉薬を使わず、土を高温でじっくり焼き締める焼き物。日本六古窯の一つで、素朴な土の肌が特徴です。酒器としてよく選ばれます。

佐賀県

有田焼(伊万里焼)

日本で最初に磁器が焼かれた産地とされ、白い肌に絵付けを施した器で知られます。

石川県

九谷焼

色鮮やかな上絵付けが特徴の磁器。食卓に華やかさを足します。

山口県

萩焼

やわらかな土の風合いの陶器。使ううちに色合いが変わっていくことから、「萩の七化け」と呼ばれます。

滋賀県

信楽焼

日本六古窯の一つ。ざらりとした土の質感と、火で生まれる景色が魅力です。

栃木県

益子焼

素朴で厚みのある陶器。日常の器として親しまれています。

日本六古窯は、瀬戸・常滑・越前・信楽・丹波立杭・備前の6つの産地です。

温度で選ぶ

冷酒には薄手の磁器やガラス、燗酒には厚みのある陶器が向くといわれます。

香りで選ぶ

香りを楽しむなら、口が広がったグラスを。縁が薄いほど、口当たりが軽くなります。

手入れ

陶器は使い始めに米のとぎ汁で煮るなどの「目止め」を勧められることがあります。使用後はよく乾かしましょう。

MANIACマニアックな話
蛇の目のお猪口

内側に青い二重の輪が描かれた白いお猪口は「蛇の目」と呼ばれ、利き酒で酒の色や澄み具合を見るために使われます。

「萩の七化け」の正体

釉薬の細かなひび「貫入」から、お酒やお茶が少しずつしみ込み、色が変わっていく現象とされます。

11 / SAKÉ & VIN

ワインと比べると、日本酒が見えてくる。

ボルドーのワインを知っていると、日本酒はぐっと身近になります。同じ醸造酒でも、考え方がこんなに違います。

日本酒ワイン
原料米・米麹・水ぶどう
糖のつくり方麹の酵素ででんぷんを糖に果実にもともと糖がある
発酵糖化と発酵が同時(並行複発酵)糖を発酵(単発酵)
度数の目安多くは15度前後多くは12〜14度前後
ラベルの手がかり特定名称、精米歩合、酒米、蔵産地(AOC)、品種、格付け、年
飲む温度冷やす〜燗まで主に冷やす〜室温

ワインの言葉は、日本酒だとどれにあたる?

ワインで見るところ日本酒でいうと違いの注意点
産地(AOC):メドック、ポムロール酒蔵の所在地。一部は地理的表示(GI):灘五郷、山形などラベルの主役は産地名より、銘柄と蔵。GIに指定されているのは一部の産地だけです。
ぶどう品種:カベルネ、メルロー酒米:山田錦、五百万石、雄町ワインは複数品種のブレンドが基本のボルドーに対し、日本酒は1種類の酒米でも複数の米でも造られます。
格付け:メドック1855年の第1級特定名称:純米大吟醸、純米吟醸、本醸造などワインの格付けは、シャトーや畑の序列。日本酒の特定名称は、原料や精米歩合などの基準で、銘柄の優劣ではありません。
ヴィンテージ(収穫年)製造年月日本酒のラベルに載るのは主に製造年月で、収穫年ではありません。多くは出荷後あまり間を置かずに楽しむお酒ですが、熟成させる古酒もあります。
シャトー(生産者)蔵元・酒蔵どちらも、造り手の個性を知る手がかりです。
醸造責任者(ウノログ)杜氏杜氏は、蔵で酒造りを取りまとめる責任者です。
テロワール(土壌・気候)米・仕込み水・気候・蔵の技土壌のほか、日本酒では水と造り手の技術の比重も大きいと考えられます。
味の言葉:タンニン、酸、ボディ旨み、酸、甘辛(日本酒度)、香り渋みを生むタンニンは日本酒の主役ではなく、旨みと甘辛、香りで語ることが多いです。
収穫期:秋酒造り:伝統的には冬(寒造り)現在は、一年を通して造る蔵もあります。

ラベルを読む順番を並べてみる

ワイン(ボルドー)ChâteauExemplePAUILLACAppellation Pauillac ContrôléeGrand Cru Classé en 1855201813 % vol. 750 ml12345
  1. シャトー名(生産者)
  2. 産地名(AOC):例 Pauillac
  3. 格付けの表記
  4. 収穫年(ヴィンテージ)
  5. アルコール度数
日本酒酒銘柄名○○酒造株式会社純米吟醸原材料名米(国産)、米麹(国産米)精米歩合 50%アルコール分 15度 / 製造年月 2026.10要冷蔵・開栓後はお早めに12345
  1. 銘柄と蔵元
  2. 特定名称:純米吟醸など
  3. 原材料:米・米麹(醸造アルコールの有無)
  4. 精米歩合:特定名称酒では表示
  5. アルコール分・製造年月・保存方法(要冷蔵など)
ボルドーワインの産地・品種・格付けを読む →
MANIACマニアックな話
ブレンドの思想

日本酒は、タンクごとの違いを調合して味をそろえ、毎年同じ味を目指すことが多い傾向があります。ワインは年ごとの違いをヴィンテージとして楽しみます。

甘さのものさし

ワインの甘さは残糖で、日本酒の甘辛は日本酒度や酸度で語られます。基準が別物なので、数字を直接比べることはできません。

12 / PAIRING

料理と合わせるときの、4つのヒント。

「これが正解」は一つではありません。まずは考え方のヒントとして。

旨みと旨みを重ねる

出汁、味噌、醤油を使う和食は、米の旨みがある純米酒となじみやすい組み合わせです。

香りの高い酒は繊細な料理に

吟醸系の華やかな香りは、白身魚や野菜などあっさりした料理の邪魔をしません。

脂のある料理には、キレか燗

揚げ物や脂のある料理には、すっきりした本醸造や、温めた純米酒を試してみましょう。

フランスの食材でも

熟成チーズや魚介のように、旨みや塩味のある食材は日本酒と合わせて楽しめることがあります。まず少量から試して、好みを見つけましょう。

主な出典:日本酒造組合中央会(JSS)、兵庫県・岡山県などの公式資料。